男女中性化時代の「ダイバーシティ&インクルージョン」
2021年11月3日放送、NHKスペシャル【ジェンダーサイエンス「男x女 性差の真実」】をご覧になった方もいらっしゃることと思います。この放送では、生れながらに決まっていると思われてきた私たちの身体や脳の性別が、実は、日々、男性と女性の間を揺れ動いているという驚きの事実を伝えているのです。イスラエルのジョエル・ダフネ博士は、1400人の男女の脳を調べ、男女差のある10か所の部位がある中、個々に詳しくみると、90%の人は両方が混在する「男女モザイク脳」をもっている、と伝えています。ダフネ博士は、「ジェンダーは、私たちを男か女の二つの枠に押し込めようとします。でも私たちの脳はそうではありません。」と言っています。社会環境や性ホルモンの変化によって、私たちは、女性の脳と男性の脳、その両方を持ち、両方の性質を内在するよう、変容してきているようです。
働く私たちにとって、このことはどんなメッセージをもっているのでしょうか。仕事をする中で、男性だから、女性だから、という発言は、昨今タブー視されています。また、男性・女性という二つの枠を超え、LGBTQとして自分の真のジェンダーを生き抜く方々も沢山いらっしゃいます。多くの組織では、ダイバーシティ&インクルージョンの大切さを掲げ、ジェンダーを含む私たちの多様性を理解し、それを価値に変えようとされているのではないでしょうか。
私たちの約9割が「男女モザイク脳」をもっているという発見は、これまでの流れに加え、生物学的なジェンダーを超えた個人内ダイバーシティ&インクルージョンに取り組むことの大切さを示唆しているようにも感じます。私のジェンダーは〇〇(例えば女性)だけれども、内面的には○○脳(例えば男性脳)からくる特性が多くを占めている、という自分の中の多様性を認めると、自己理解・自己受容を深めることになるでしょう。また、私たちが男性脳と女性脳、その両方の性質をもち、その間を日々行き来できるのだとしたら、使ってこなかった方の特性を更に磨いてみることも可能なのではないでしょうか。両方の性質を自分の内側で育てることで、人という存在の幅が広がり、人によっては制御していた考え方を手放すきっかけになるのかもしれません。更に、自分の中のダイバーシティ&インクルージョンに取り組むことで、他の人のジェンダーやその多様性に対して、より寛容な心を養うことができるのではないでしょうか。
自分のジェンダーを自分自身が認め、受け入れ、誇りに思うことは大切なことではないかと思います。それが女性であれ、男性であれ、LGBTQであれ、自分の大切なアイデンティティの一つです。それを受け入れることは、人によって自信を高める大きな一歩になります。それに加え、自分の内側にも豊かな多様性があることを理解し、個人内ダイバーシティ&インクルージョンに取り組むことは、私たちが更なる可能性を生きることにつながるはずです。人類の進化がもたらした男女の中性化は、両方の要素を活用できる「私たちに与えられた可能性」と、プラスにとらえてみるのもひとつではないでしょうか。