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日本文化から学ぶ「自己肯定感」

日本には古くから、壊れて使えなくなったものを繕って「美」を創造するという、独特な文化があったようです。その代表に、割れたり欠けたりした陶器に漆をぬって繕い、蘇らせ、そこに新たな「美」を見いだして慈しむという風習があります。その手法は実に見事で、金で繕う「金継ぎ」、銀で繕う「銀継ぎ」と、欠けてしまった器を美しさへと変容させる匠な技術として、今も受け継がれているようです。これは、なんと世界で唯一の手法とのこと―。こうした「不足の美を慈しむ」精神は、日本特有の美学ともいえ、私たち日本人にとって誇るべき伝統といえます。

昨今、日本人は世界と比較され、幸福度や自己肯定感が低いと言われています。国連の関連団体が調査した「世界幸福度報告」2022年版によると、日本は54位と、先進国の中ではその順位が低いといわれています。また、2019年の内閣府による若者白書によれば、日本の若者のうち、自分自身に満足している者の割合は5割弱、自分には長所があると思っている者の割合は7割弱で、いずれも諸外国と比べて日本が最も低いと位置づけられています。

日本人の幸福度や自己肯定感が低いこと。これに真剣に取り組み、少しでも数値をあげようとする試みは大切なことかもしれません。しかし、これはなかなか根深い問題で、長年多くの取り組みがなされているにも関わらず、毎年、数値が横ばいとなっているのも事実です。自分が、不十分だと感じることは、何歳になっても、どんな仕事・役職についたとしても、万人につきまとう共通の悩みではないでしょうか。私たちの多くは、それを無いものとしたり、時には克服しようと戦ったりするものです。

一方で、日本文化にある「不足の美を慈しむ」精神性を活かし、私たちが取り組めることはないのでしょうか。古くなって必要のなくなったものを繕って「美」を創造する私たち本来の習性を取り戻し、不足の自分を慈しむことができたら、どれだけ私たちは豊かに生きることができるのでしょう。金や銀で継ぐかのように、大切に繕い、自分の中に新たな「美」を見いだすことができたとしたら、それも自己肯定感を育む一つと言えるのではないでしょうか。

あなた自身が、不足に感じている自分の性質は何でしょう。例えば、人をひっぱるような強いリーダーシップ・影響力がないと感じているとしましょう。これまでに、うまくいかない原因を分析し、克服しようと努力したこともあるかもしれませんし、それも大切なプロセスだったはずです。更に今度は、不足の美という視点で自分をみると、あなたにはひっぱるという特質の代わりに、人を陰で支えるという才能があるのかもしれません。もしかするとこぼれてしまう人々の気持ちを理解し、聴くことによって人を励ますことに誰よりも長けているのかもしれません。その才能に自信を持ち、「金継ぎ」の如く、丁寧に磨いてゆくと、やがてそれが独自の強いリーダーシップ・影響力へと育つ可能性がきっとあるはずです。

私たち日本人が受け継いできた日本文化「不足の美を慈しむ」精神を、今こそ思い出したいものです。そして、自分ならではの自己肯定感、幸福感、リーダーシップの強化に役立てたいものです。