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両極の考えをもつメリット

たくさんの良書が溢れる中、「しあわせの見つけ方」という深く心に響く本に出逢いました。この本は、イグノーベル賞を受賞された、外科医であり漢方医の新見正則先生が、18歳・成人を迎える娘さんに宛てたメッセージがまとめられたものです。ご自身の生い立ちや人生観を共有しつつ、そこから培った人生の教訓「しあわせになる智慧」を、愛する娘さんに伝え残そうとする心がこもった感動の一冊です。

この本に書かれている数ある智慧の中で、「どんな時も、自分の中に両極端な考えをもとう」という娘さんへのメッセージは、特にユニークな提言だと感じました(下記引用)。
“パパはいつも頭の中に両極端な意見をもつようにしています。世の中である意見が大多数のときは、少数派の意見に耳を傾け、それを自分の頭で理解して並べています。通常は少数派の意見は間違っていると扱われます。そこで、本当に少数派のこの意見は間違っているのだろうかと自問自答するのです”

医師として命に関わる判断を迫られる場面が多い中、両極端な見方を理解した上で、自分になりに判断をすることがとても大事だったというのです。例えば、抗がん剤治療に存在する両極端な意見です。抗がん剤を適正に使用すれば生存率が向上するという視点と、抗がん剤の誤った使用法によって命をおとすかもしれないという視点。こうした両方の視点の正しさを真摯に理解し、自分なりに判断することが大切だったことが伝えられています。更には、権力のある誰かが決めたことだとしても、その反対の可能性も考え、両極端な意見を同時に持てる人になってほしい、その方が楽しい、と娘さんに愛あるメッセージを伝えています。

この両極端な意見を同時に持つ、という考え方は、予測不能な時代にいる私たちにとって大事ではないでしょうか。わからない未来に対して一つの正解を見つけて安心したいと思うのが私たちの常ですが、状況が変わり、常識も変わりゆく今、少数派の意見・真逆の意見が正しいとしたら、と考えてみることで、より包括的・本質的な判断ができるのではないかと思います。

両極の視点をもつことは、コーチングやリーダーシップ開発という分野で、人の成長を支援する際にも助けになります。例えば、リーダーが新しいチャレンジをする時、恐怖心がでてきてやりたいことをなかなか実施できない場合があります。その恐怖心は、時にその人を大きく支配し、身動きがとれなくなり、結局はチャレンジしない選択をすることもあります。
そんな時、恐怖心の真逆は何かを考えてみる、というアプローチがあります。恐怖心の真逆というと皆さんは何を思い浮かべますか?答えは一つではありませんが、一つの選択肢として、高揚感をあげる人がいます。それはまるで、バンジージャンプに臨む時、恐怖心でうずくまってしまう自分と、逆に、思い切ってジャンプすることで得られる高揚感を感じる自分もいるというイメージです。恐怖心も持っているけれど、同時に高揚感を持つ自分もありだと思ってみると、とたんに見方が変わってチャレンジしようと勇気がでてくることがあります。似たように、一見ネガティブに思える気持ちの逆を考え、その逆も真実だと感じてみることは、私たちの変容を助けることがあります。相手に怒りも感じるが、逆に愛情も感じている。不安もあるが、自信もある。自分の中の両極端の気持ちにイエスといってみることで、思い込みがはずれ、本当は自分がどうしたいのかを見つけられることがあるのです。

両極を大切に生きることで、得られるメリットは沢山あるのではないでしょうか。様々な考え方を受け入れることで、自分の柔軟性を高めることにもなるでしょう。また、一つの気持ちに支配されそうになった時、その逆もありだと思うことで、真実が見えてくることもあるでしょう。予測不能な時代に、両極を大切にして生きる習慣を始めてみませんか。