人見るもよし、人見ざるもよし、我は咲くなり
『人見るもよし、人見ざるもよし、我は咲くなり』——武者小路実篤の有名な言葉です。どの花も自分の命を全うするかのように、誇らしく咲くものです。誰かに見られているかどうかなど関係ありません。花のように、人が見ていようがいまいが、私は私として咲きます、そんなメッセージが込められた言葉です。
中学生の頃、担任の先生からこの言葉を贈られました。思春期の頃、人の目が気になってなかなか積極的に発言することができなかった私に贈ってくれたのです。当時、この言葉にどれだけ励まされたことでしょう。花もそうやって咲いているのならば、私もそう咲きたい、そう思ったのを覚えています。そして少しずつ、積極的に自分を表現するようになっていったように思います。
今もこの言葉は大きな励みです。何歳になっても、私たちは新しいことに挑戦する時、それを引き留める内なる声がでてくるものです。世間はどう思うんだろう。誰も評価してくれるはずがない。家族は反対するに決まっている。いい年齢なんだから笑われる。こうした声はあげたらキリがなく、その結果、やりたかったことをあきらめた、という経験は誰でも一つや二つもっているのではないでしょうか。
そんな時、この言葉を思い出したいものです。誰かに評価されるかどうかという軸から離れ、素直に自分なりの花を咲かせようとすることは、それだけで尊いものです。今日も野に咲く花が、そのことを伝えてくれているのかもしれません。
関 京子