1. HOME
  2. ブログ
  3. オリンピックに学ぶ2つの努力

オリンピックに学ぶ2つの努力

東京オリンピックが開催されています。今回は、日本が金メダルの歴代最多新記録を獲得しており、日本選手の活躍が光る大会となっています。メダルを獲得した後のインタビューでよく耳にするのは、「練習量では誰にも負けない自信がありました」という選手の言葉です。恐らく血の滲むような練習を重ねてきたに違いありません。同時に、選手の練習量以外にも、メダルをとるために多くの努力があったはずです。それは、一体どんな努力なのでしょう。

柔道の井上康生監督は、長く低迷してきた柔道界を変えるために、二つの改革に取り組んだそうです。一つは、“根性論”に頼るのではなく、徹底的なデータ解析を取り入れたことです。最新の技術を取り入れ、海外選手の戦術を徹底的にデータ解析し、それを指導に活かしたというのです。データ解析は審判にもおよび、どの審判がどんな判断をしてきたのか、記録をとり続けて分析したとのこと。こうした井上監督の努力には頭が下がります。これまでなかったデータ解析は、東京オリンピックでの柔道界の記録に大きく貢献したことでしょう。

井上監督が取り組んだもう一つの改革。それは、選手の心を磨くこと。以前、井上監督はこのように言っています。「柔道家に大事な要素は技術的なことに加え、心構えの部分である」と。心技体といいますが、柔道に懸ける思いや自分自身がどう生きるべきか、といった心の部分がしっかり備わっていなければ強くなれないというのです。そのために、選手との対話を増やし、一人ひとりが何を考えているのかを聴き、関係強化にも取り組んだようです。合宿では座禅を取り入れるなど、練習以外にも努力をしてきたことがうかがえます。

こうした二つの改革が、この東京オリンピックでの柔道選手の活躍につながったといっても過言ではありません。そして、井上監督が取り組んだ二つの取り組みは、あらゆることに適応することができるように思います。データ分析という左脳的なアプローチ。心を磨くという目に見えづらい感覚的・右脳的なアプローチ。今やスポーツ界ではこうした二つのアプローチは常識となっているのかもしれません。そして、人の成長に取り組む人材育成という分野においても、この二つの重要性は同じです。根性論だけで人を育てることから卒業し、その人がこれまでどんな行動をとってきたのか観察をしたり、何らかのアセスメントをしたりして理解することは大事です。また、本人が自分の軸をもち、強い心を磨けるよう、あらゆる手段でサポートすることも、成長には欠かせません。

物事を良くしたい時、一見相反する二つのアプローチに両方取り組んでみること——。これからの私たちの生きる・働くヒントになるように思います。そのヒントを自分の領域で活かしてみませんか。

関 京子