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「今ここ」が鍵

忙しい毎日の中で、皆さんは、「今ここ」にいる時間をどれだけとっていらっしゃるでしょうか。米国の研究*では、私たちは起きている時間の半分以上は、「今ここ」に集中しておらず、次にやることや、将来のことで頭をいっぱいにしているとのことです。また、情報過多の時代となった今、私たちはスマホ一つで情報あふれる世界に一瞬で入ることができます。わからないことがあれば、「今ここ」の自分が考える代わりに、他者の意見、流行、専門家の考察を調べることができ、外の情報で物事を判断することも増えています。

結果として、私たちは、今自分が何を感じているのか、本当はどうしたいのか、といった、奥深くにある自分の声に気づきにくくなっているのではないでしょうか。本質的に自分を見つめ直したいと感じ、そもそも自分は何がしたいのか、といった根本的なテーマに向き合おうとしている方がこれまで以上に多いと感じる今日この頃です。自分の内側で起こっていることがわかりづらく、本当の気持ちや意見とつながりにくくなることは、決して些細な悩みではありません。結果として、何事にもやる気がなくなったり、自分を見失って自暴自棄になったり、精神的に不安定になる可能性があるからです。組織においても社員の集中力が下がって、生産性の低下にもつながる恐れがあります。

ビジネス界では、「今ここ」に意識を向ける取り組みが年々増えているようです。評価判断から離れ「今ここ」で体験していることをただ観るためのマインドフルネス研修は、今や大手企業では常識のように取り入れられています。その効果として、集中力が高まる、生産性があがる、自己肯定感があがる、など数多く報告されているようです。Appleの創始者、スティーブ・ジョブズが、「今ここ」に意識を向ける禅を高く評価していたことは有名で、その意識がクリエイティビティを生むと強く提唱されていたようです。社内に瞑想ルームをつくり、瞑想を社員教育にもとりいれるほどだったと言われています。

「今ここ」に意識を向けることは、速度の速い情報過多の現代社会にいる私たちが生きていきく上で、今や必須のスキルともいえるのかもしれません。私たちのウェルビーイングのため、クリエイティビティを高めるため、組織の生産性を高めるために大切なことです。次の中から、一つでもやってみたいことがあれば、それを習慣化してみるのはいかがでしょうか。

  • 1~2時間に1回アラームを設定して、5分でもよいので定期的に「余白の時間」をとる。余白の時間は、自分の心がホッとできること(窓の外を眺めるなど)に費やす。
  • 毎朝、自分が知りたいことについて問いをつくり、その答えが、後からふと閃くこと(あるいは他の人から示される)を信頼して、頭で考えることを止めて過ごしてみる。
  • 「今ここ」に集中することで、自分が心から楽しめることを始める。あるいは再開する。例えば、料理、楽器の演奏、写真、庭いじりなど。
  • スピードを緩め、呼吸をカウントしながら歩く(4歩吸う、8歩吐くなど)
  • 「今ここ」の自分に起きていることを日記に記し、それを毎日の習慣にする。

日々のこうしたささやかな行為は、やがて自分のあり方に少しずつ影響していくことに気づいてみてください。よりリラックスする自分を感じられるかもしれません。より自分自身とのつながりを持てるようになるかもしれません。気が付いてみると、自己肯定感が高まり、アイデアを生み出すクリエイティビティが養われ、これまで以上に周囲に貢献する自分を感じている可能性もあります。

(参考文献)

*Killingsworth, M. A., & Gilbert, D. T. (2010). A wandering mind is an unhappy mind. Science, 330(6006), 932.
https://www.science.org/doi/10.1126/science.1192439